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2007年03月30日

昭和天皇とカブトガニ

 「生きている化石」といわれるカブトガニが、なぜ絶滅しなかったか、理由はいくつか考えられる。人間には目が二つあるが、前しか見えないので後ろから襲われたらひとたまりもない。外敵には案外弱い動物なのである。同じく二つしかないトンボの場合は、複眼なので前も後ろも見えるようになっている。だから外敵に後ろから接近されてもひょいと飛んで逃げられる。


 ところがカブトガニには目が四つあるおかげで、前後左右も同時に警戒することができる。危険を察知すると、砂泥の中にスッともぐって隠れてしまう。だから外敵に襲われる心配もない。だいいち甲羅が堅くて、とても食べられたものではない。たまに産卵のために陸に上がってヨタヨタしているところを鳥にやられるぐらいである。


 このような理由が絶滅から救われた主な原因だろう。またエサは砂泥の中にいる微生物であり、渚を浄化している掃除役をしていることになる。食用とはならないけれども、どんな生き物も自然の中ではなんらかの役割を担っている。必要とされているからこそ、絶滅することなく生き続けているのだろう。


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鳥羽水族館提供


 遠い昔、三葉虫やアンモナイトが繁栄し、そして絶滅していったことを考えると興味深い。


 瀬戸内海の一部や九州沿岸の遠浅の砂泥に棲み、岡山県児島湾では天然記念物に指定されている。三十数年前、岡山国体に行幸された昭和天皇を当時の岡山県知事が案内し、児島湾を一望できる高台から「今は海ですが近い将来、海を干拓工事で埋め立て工場地帯にする予定です」と説明したら陛下は「それではこのへんのカブトガニは棲息場所がなくなってだんだんいなくなりますよ」といわれた。知事は行政のエリートでも動物のエコロジーには無知だったので、その後、専門家に調べさせ、これは大変なことだと気がつき、干拓工事を中止、代わってカブトガニ保護センターをつくることに方針変更をしたことがあった。


 後日、鳥羽水族館に天皇、皇后両陛下がお越しになった時、私は水槽から一尾をとりだしてご覧に入れた。かなりの時間をかけてカブトガニの説明をして差し上げると陛下は大変喜ばれ、うなずきながら質問もされた。


 そこで私が「このカブトガニが瀬戸内海で生き続けているのは陛下のおかげです。絶滅寸前のところを助けていただきました。カブトガニに代わってお礼申し上げます」と申し上げたら、陛下は実に嬉しそうに感慨深げな御様子だった。


 私は陛下にカブトガニの泥がつくといけないのでタオルをお渡ししても、拭こうともなさらない。もういっぺんお勧めしたが、ちょっと拭く真似をなさるだけだった。御自身が生物学者であるから、水や泥がついてもちっとも気にないのだ。私は改めて、陛下の海の生物に対する造詣の深さと愛情の深さを知った。


 このように国民一人ひとりがものいわぬカブトガニをはじめ、無数の生きものを研究し、その生態系を知ることが地球環境を守ることになるのではないか。

2007年03月01日

イノシシは誤解されている

 今年の干支のイノシシは大変気が荒く、猪突猛進のたとえもある。確かに敵に襲われた場合は山中を凄いスピードで駆け抜けることができるが、前にある障害物の木や壁に直進してぶつかることはない。鋭いセンサーをもっていて直感的に避けることができるからで、その角度も急カーブで逃げられるように作られている。


 その昔、富士の裾野で曾我兄弟や仁田の四郎のイノシシ退治の武勇伝もあったが、イノシシの牙は鋭くとがっていて人間も襲われると大けがをすることがある。だが一般には防禦用として使うことが多い。


 いのししの親は秋深くなると子ども達を連れて山の斜面を1メートルほどの穴を掘ることがある。これは自然薯を掘っているわけで、秋の陽気のよい時に栄養をたっぷりととらせて、やがて迎える冬の食糧危機の厳しさに備えるためだろう。


 少年時代に裏山で、このヤマイモを掘りに行ったことがあるが、平坦地では掘りにくくてやはり傾斜地をよく選んだものだ。ところが秋になると目印が枯れて場所がわからなくなることもある。だがイノシシは、その場所を覚えていてお先にとばかり掘り返している。


 地域により多少の差はあるが、東海地方の山を調べるとイノシシの出産時期は決まっていて毎年4月15日から4月29日の間である。5月のゴールデンウィークに家族連れで遊びに行くわけではない。毎春、この時季は桜の花も散り、野に里に新芽がでる季節であり、これが母親が子育てをするのに絶好の季節なのだ。このグッドタイミングは生物時計といい自然界の不思議さでもある。


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(AFLO)


 子どもはウリ坊と呼ばれ、独特の縞模様が美しく可愛い。ふつうイノシシの赤ちゃんは4頭から14頭生まれてくるが当分は目が見えない。ところが赤ちゃんは母親の乳首にしがみついてお乳をねだる。例えばブタは世界に約500種もおり、大きいのから小さいもの、黒や白などがいる。ブタも子だくさんで有名だ。


 ブタの場合は世界中の種が統一されており母親は赤ちゃんを出産後、ピタリ59分50秒経つと初乳が出てくる仕組みだ。60分ではないのが何ともデリケートである。赤ちゃんは目が見えないけれどオッパイを飲むが、時間は僅か10秒だけ。その間お乳を飲めた子は育つが、飲めない子は脱落してしまう。次は1時間経たないと乳が出ないからだ。そんなブウブウいっているブタにそんな知恵があったとは、トンと知らなかった人も多いのではないか。


 イノシシも同様で強い子は胸の近くで乳を飲むから強いけれど、おしりの方はみな吸われて乳の出がよくない。そんために弱ってしまうのは止むを得ない。それに母親が立ち上がる時に、後足で踏まれたり、けられたりすることもある。これが本当のふんだりけったりか。


 食性はイモ類、野菜などだが、山野の開発で食料不足となり、ミカンの木にジャンプして食べるのが増えている。やはりイノシシも健康保持ためビタミンCの補給をしているのだろうか