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2007年05月01日

カッコウの托卵

 鳥の子育てといえば、巣を作り、卵を産み、それを母親か父親が温めて孵化させるというのが一般的である。そして孵化したヒナは親から食物をもらい、巣立ちの日まで親の保護を受けながら育っていくわけである。


 だが中にはずるい親もいて、巣も作らず、子どもの面倒もみないという「とんでもない」というか、「翔んでいる」親がいる。他人の巣に卵を産みつけ、その巣の主にわが子を育てさせる親である。


 このような習性は「托卵」と呼ばれ、カッコウの親が行うことで有名である。そのためカッコウだけがどうも悪者にされがちであるが、托卵は彼らだけがするのではなく、世界に約80種もいる。そのうちの約6割は、カッコウが所属するホトトギス科の鳥たちだが、ハタオリドリ科やガンカモ科の鳥たちにもいる。


カッコウ.gif
カッコウ(群馬県立自然史博物館提供)


 そうはいっても鳥類全体では1パーセントだから珍しい習性だ。カッコウは初夏に日本に渡ってきて繁殖する夏鳥である。ちょうど、多くの野鳥が巣に卵を産み卵を温め始める季節にカッコウも繁殖期を迎えるのである。カッコウが卵を託す鳥は日本ではモズやオオヨシキリなど約20種もいる。だが、一羽の母親が、数種類の鳥に託卵することはなく、母親ごとに托卵する相手の鳥の種類が決まっているようである。


 その卵は托卵する相手が産む卵と模様がよく似ている。カッコウの母親は、これといった代理の母親に眼をつけると、その鳥が巣を作り始めるころから、近くの木にとまり、ずっとそのようすをうかがっている。そして巣が完成し卵が産みだされると、母親のわずかなすきをねらって巣に侵入し、わずか10秒以内で卵を産む。まさに電光石火の早業である。


 そして卵を産むと、ふたたびさっと飛び去り、次の代理の母親を探しに行ってしまう。自分の産んだ卵を振り返りもしない。なんと厚かましい鳥だと思うかもしれないが、カッコウも節度は守っていて一つの巣には1個だけというきまりがある。


 他の鳥の巣に産みつけられた卵は代理の母親に温められ、やがてヒナになる。実の母親に見離されたヒナは、ここで驚くべき生活力を発揮する。カッコウの卵は代理の母親の卵よりも、1、2日くらい早く孵化する。そして巣の中にいる他のヒナやまだ孵化していない卵を背にかつぎ上げ、次々に巣の外へ押し出してしまう。


 カッコウのヒナは、背中に触れたものをかつぎ上げ、巣の縁までおしてゆく習性があり、他の卵やヒナはこの犠牲となる。残酷なようだが母親に見離されたヒナが生きるためにはそんなことはいっていられない。こうして他人の巣の中で代理母の愛情を独り占めにしてすくすくと育ってゆく。食物を一番良く食べる元気な子を優先的に育てるという鳥の本能によるものだろう。


 カッコウの母親は自分で卵は産んでも後は知らん顔で「カッコイイ」とはいえない。だが、他の鳥の巣に卵を産みつけるのは至難の技であり、この数少ないカッコウの托卵技術は離れ技というべきものだろう。