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2007年06月01日

ナマズと地震

 地球上に棲息する魚類は約4万種といわれている。そのうちナマズは約2400種を数える。いかにナマズは種類が豊富で分布も広いかを物語っている。しかも海には棲まず、河川湖沼の淡水域にしか棲まないタイプだ。世界一の大河アマゾンだけでも500種以上を数える。専門家が少ないので、未調査部分が多く今後まだ種類が増えると予測できる。


 日本は国土も狭く、川や湖も大きくなく僅か十数種に過ぎない。日本最大は琵琶湖のビワコオオナマズで、約1メートルに達する。現在のように開発がされていなかった国内の各地では至るところの淡水に棲んでいたから、地方によってはナマズ料理が盛んであった。それほど日本人とナマズの関係はポピュラーで身近な存在であったから、生態観察はゆきとどいていたものと思われる。


鳥羽ビワコオオナマズ.jpg
ビワコオオナマズ(鳥羽水族館提供)


 国内産のナマズはいずれも小型で、色彩も薄茶色やねずみ色など地味である。ところが、ミシシッピ河には白や赤などカラフルなものが多い。


 江戸時代から地震が起こるとナマズが騒ぐとよく言われてきたように、水面に浮かんで騒いだり、他の場所に移動したり、時に異常繁殖や激減するなど、すこぶる反応のしかたが早い動物とされる。


 ナマズは長い触角のヒゲが常にアンテナの役目を果たし、震動や音波に敏感に反応する。このヒゲはナマズ特有のもので長くのびていて餌を探したり、外敵からの防禦の際も役に立つ。海水魚ではヒゲダイ、ヒメジ、ホウボウなどにも触角はあるが、ナマズの比ではない。水温や水質の変化に敏感なだけでなく地震、台風、津波や地殻の振動音にも鋭敏だ。したがって地震などは、すばやくキャッチできる「生きた地震計」といえるだろう。


 28年前、秋篠宮殿下が小学校5年生の時、鳥羽水族館に来館された際、私が館内をご案内したら、当時の礼宮さまは、ナマズとカメに特に興味があった。のちに秋篠宮邸を訪問すると殿下と妃殿下のお二人は、「館長、うちのナマズが大きくなったから見てほしい」といわれ応接室の奥に案内された。メコンオオナマズの子どもだが、約1メートルもあった。


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秋篠宮邸訪問時の記念撮影(後方列中央が筆者)=筆者提供


 殿下はロンドンの大学に留学中、ナマズの研究をされたのでナマズにあやってヒゲをはやしたのとジョークを言ったら「ピンポン。毎日ナマズ食わずで研究している」と答えられた。


 特にメコンオオナマズの研究にはタイやラオス、カンボジアなどを数回も歴訪し生態観察も御熱心である。「ナマズの殿下」といわれる所以である。その後、8回も御来館されたが、ナマズの学名をラテン語で話され、その御熱心な研究がうかがい知れる。


 日本動物園水族館協会の総裁として総会でナマズの講演とその後のライフワークとしておられるニワトリ(野鶏)の遺伝子の研究で学位を取得されたことは有名である。学者タイプの殿下が、このような生物研究に没頭されることはナマズたちも感謝していることだろう。身近なナマズの世界は解っていそうでも、まだまだ未知なるものが多いのである。