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けがのふりをして子を救う、コチドリ

 自分の産んだ卵や、卵からかえったヒナに、まったく見向きをしない鳥がいるかと思えば、子のために自分の身体を投げ出す鳥もいる。「擬傷」という行動によって、子を外敵から救う鳥たちである。シギやチドリの仲間に多いが、キジやホオジロ、フクロウの仲間にもこのような行動をする鳥がいる。


 この中で「親の鏡」としてよく紹介されるのは、コチドリである。全長17センチほどのチドリの仲間では最も小さい種類である。北極圏を除いて、ユーラシア大陸のほぼ全域で見ることができ、日本にも夏鳥としてやってきて各地で繁殖するので、目にふれやすい。


 コチドリは、川の中流から下流にかけての小石の多い川岸に巣を作って卵を産む。また海の砂丘や畑などでも巣を作る。春の終りから夏にかけて、つがいでなわばりをもち、巣といっても木の上ではなく、地面に作る。枯れ草や小石を集めた粗末なもので、巣材がない場合は地面に浅いくぼみを作るだけといった場合もある。


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写真提供/柳町邦光氏((財)日本野鳥の会 福井県支部長)


 この巣を見た限りでは、生まれくるわが子に対する心づかいはお世辞にも感じられない。だが、実はこの巣は周囲の環境に溶け込むよう、周到な設計のもとに作られている。実際に、排水や卵の保護などの条件はすべて整っており、しかし敵の目につきにくくなっている。


 コチドリの親は、見かけよりも質を優先し、わが子が最もすみやすい巣を作る。4個の卵を産み、夫婦が昼夜を問わず交替で暖める。25日ほどで卵がふ化し、生まれたヒナは、うぶ毛が乾くまでじっとしているが、数時間もすると巣から出てチョコチョコと歩き出す。


 親は食物が豊富にある水辺に子どもたちを誘導していく。子どもは文字通りの千鳥足で勝手気ままに歩く。巣はこの時点で捨てられ二度と見向きもされない。不思議なのは、コチドリの親は子に食物を与えず、子は自分で食物を探すしかない。


 ところで、擬傷とはどういう行動なのだろう。コチドリの卵と子には、人間をはじめ、イヌやネコ、イタチ、ヘビなどの敵がいる。トンビやタカなど肉食種の鳥も恐ろしい敵である。このような敵が近づくと、親鳥は敵の目の前に飛び出す。そして、けがをした真似をして地上をバタバタとはね回り、敵の目を引きつける。翼を広げて地面をたたき、もがき苦しんでいるように見せるのである。敵が親鳥を捕らえようと一歩動くと、それに合わせて逃げる。


 こうして親鳥は敵に自分を追いかけさせる。その際、子のいる場所とは反対の方向に逃げ、十分に離れた場所まで敵を誘い出すと、いきなり飛び立って、敵から逃げてしまう。このように親は子を守るため、身の危険をかえりみず命がけである。演技だといっても、無防備な姿を敵にさらすのだから、一歩間違えば、自分が餌食になってしまう。正に我が身を捨ててわが子を守るわけである。


 コチドリの子どもたちは、親鳥について歩きながら成長していく。ヨチヨチ歩きから1カ月もたつと飛ぶこともできるようになる。




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