原油高騰のなかで日本が課せられた安定供給への道
ガソリン税の暫定税率の期限切れと再復活とめまぐるしく変わる政治の動きに振り回されたのは、消費者と石油業界であった。世界的な原油高の流れの中で、石油資源の安定供給と価格安定は国民生活に大きな関心ごとである。道路特定財源としてのガソリン税のあり方とともに、日本の資源エネルギー確保のあり方を石油連盟に聞く――。
石油連盟 総務部広報グループ長
田中 英樹

世界的な原油高騰の背景
――原油の高騰が続いて1バレル100ドルを大きく超えて200ドルという声もありますが……。
田中●昨年のサブプライムローン問題以降、極端に原油の値段が上がりました。2003年頃から右肩上がりで原油価格は上昇傾向にありましたが、昨年の夏までは概ね50~80ドルの幅で動いていました。ところが、ここ1年で倍、ここ4年で4~5倍です。これは異常な状況です。
――この高騰は世界的な傾向です。その原因は、WTI(ウェスト・テキサス・インターメディエイト)など石油の先物取引市場の影響があるのではないでしょうか。
田中●異常な高値に関しては、先物市場での登記資金の影響が大きいですね。しかし、石油ばかりでなく資源・商品市場全体が高騰している状態です。これはサブプライム問題以降、投資家や投機家がリスクが複雑な金融商品に対して不信感を強め、需要が安定しており、リスク評価が容易な資源への投資を増やしているからです。
投機家としては、ボラティリティ(価格の変動)があった方が利益を生むわけですから、市場が変動している状態を歓迎するのです。相場の高騰が市場で歓迎され、結果として原油がここまで高騰しているというわけです。
――ピークがどこか、先行きの見通しはつきませんか。
田中●いずれはどこかのタイミングで頭打ちになって下がるのでしょうが、それがいつ、どのタイミングで、どのようなレベルで起るかはわかりません。
――結局、原油の値段というのは、アメリカのWTIやロンドンのICE(インターナショナル・エクスチェンジ)市場で値段が決められているということですね。
田中●そうですね。石油というのはグローバルな商品です。その価格は実態としてはニューヨークで決まってしまいます。これだけ高騰してくると、油種の違いによる価格差の割合も大きく減少しています。

ガソリンの高騰はどこまで続く!?(6月4日東京都文京区内撮影)
――日本の政府がなんらかのアクションを起こしても、高騰状態に対して影響を与えることはできないのでしょうか。
田中●いろんな議論もあるでしょうが、日本単独で何かをやっても効果は期待できません。いまや石油はコモディティ(日用必需品)ではなく、完全に金融商品になっています。その金融取引を根本的に制限するのは、自由経済化では不可能なことだと思います。
国によっては、ガソリンの価格を国が調整して価格上昇を抑制していますが、これはいずれ財政の問題に波及する恐れもあり、ガソリン価格だけを下げればいいというものではありません。
――その一方で、かつて「オイルピーク」が言われていました。地球から取れる石油に限界がまもなく来るという説なのですが……。
田中●もちろん有限な資源なのでピークはあるのでしょうが、近々に来ることはありません。「オイルピーク」論が言われていたのは、原油価格が1バレル30ドルか40ドルの時代です。その時に採算に合わせた石油採取と、100ドル超時代の採取は経済性から考えても範囲がグッと広がっています。ピークがどんどん先送りされている状態ではないでしょうか。
バイオガソリンの普及とガソリン税の問題点
――いまは環境問題が切実な問題な問題となっており、石油業界も昨年から「バイオガソリン」に取り組んでおります。食糧品の高騰も含めて、消費者からの反応はいかがでしょうか。
田中●バイオガソリンというのは、日本では植物生まれのバイオエタノールと石油系ガスのイソブテンを合成した「バイオETBE」を配合したレギュラーガソリンですが、拒絶感はほとんどありません。バイオガソリンの販売量は少しずつですが増えています。
バイオの材料として、アメリカではトウモロコシ、ブラジルではサトウキビが使われていますが、オーストラリアでの2年連続の不作とサブライム問題が重なって世界の穀物市場に影響を与え、大きな問題となってしまったところがあります。しかし、バイオを救世主扱いにしたり極悪人にしたりといった極端な議論をするのでなく、国の事情に合わせて上手に使えば効率のいい資源になるのではないでしょうか。日本も技術力を生かして日本のエネルギー政策に貢献するものとしての位置づけ、国民の理解を得る必要があるでしょうね。
――普及率はどうですか?
田中●国は50万キロリットルを導入目標としていますが、石油業界では2010年までに21万キロリットルの導入を確約しています。
――さて、今回の4月、5月のガソリン税暫定税率の期限切れと再復活で、石油業界やガソリンスタンドは相当混乱をきたしたと思いますが。
田中●政治の動きに翻弄された2カ月間でした。いまガソリンスタンドはなかなか利益があがらず、経営が非常に難しい状態なのです。特に経営規模の小さい地方のスタンドは、まさにぎりぎりの状態で営業を続けているのが現状です。
製造・流通段階での適正なマージンが確保できなければ、生き残りも店舗への投資もできません。消費者へのサービスという面からも原油価格の安定を期待したいですね。
――日本のガソリンの値段は世界の先進国と比べて決して高くないという意見もありますが……。
田中●OECDの国の中では低い方から7番目というデータもありますし、財務省では従来からそういう主張をしています。
しかし、ガソリンはそれ自体を手に入れるのが目的ではなく、車に入れて移動するための手段です。イギリスやドイツではガソリン自体の価格は日本よりも高いのですが、ドイツの場合アウトバーンは無料だし、イギリスも高速代はそれほど高くありません。日本は東京から大阪まで500キロメートルぐらいで高速料金だけで1万円以上かかります。ですから、ガソリン代単体だけが高いか低いかを単純に比較するもの問題が残るのではないでしょうか。
――石油連盟は道路特定財源としてのガソリン税の問題では、全国から1035万人の署名を集めて一般財源化に反対されていますね。
田中●一般財源化する余裕があるのであれば、その分は一旦消費者に返すべきなのです。「受益者負担」の考えからも本来、道路特定財源の使途は道路だけに限るべきものです。道路の受益者のために使わないのであれば一旦ドライバーに返すべきで、我われのスタンスは、あくまで、一般財源化するのであれば減税をしてくださいという主張で、余っているから他の目的に使うという横流し的な発想で、道路特定財源を考えるべきではありません。
ただ今回の問題で、国民消費者の皆さまのガソリン税に対する認識がかなり広まったのではないでしょうか。日本の石油業界も技術力を生かして燃料電池やクリーンディーゼルなど日本のエネルギー政策に貢献できるよう努力を続けますので、皆さまのご理解をいただければと思います。


