国会議員の素顔

« 2008年07月 | トップへ戻る | 2008年09月 »

2008年08月01日

茂木敏充 日本の再生にはマイナス要素をプラスに転化する発想の転換を

茂木敏充 衆議院議員


mogtegi.jpg

もてぎ としみつ
1955年栃木県足利市生まれ。78年東京大学卒業。丸紅㈱入社。
米国ハーバード大学大学院修了(公共政策)。読売新聞社政治部記
者。マッキンゼ-社コンサルタント。93年第衆議院選挙に初立候補
し、トップ当選。以降5期連続当選。99年通産政務次官。2002年
外務副大臣。03年国務大臣(沖縄・北方、科学技術、IT担当)。07
年衆議院厚生労働委員長。08年8月2日発足した福田改造内閣で
金融、行政改革、公務員制度改革担当相に就任。


――7月初旬の洞爺湖サミットは、環境サミットであると同時に日本のアジアにおける位置を問われるものでした。議長国としてはどう評価されますか?


茂木◎国内メディアの評価は厳しいものが多かったですが、客観的にはまずまずの成果をあげたサミットだったと思います。カナダのトロント大学にあるG8サミットのリサーチグループによると、今回のサミットは総合点で78点の評価でした。2000年の沖縄サミットが74.5点、93年の東京サミットが68点でしたから、過去の3回のサミットでも最も高いポイントですし、海外でのサミットと比べてもトップクラスの評価でした。


 日本人は国際機関に対して幻想を持っているのかもしれませんが、実際は国連もサミットの場も国際協調の場ではありますが善意の集まりではなく、国益と利害がぶつかり合うところなのです。たとえば今回もにわかにクローズアップされた食糧問題でも、バイオ燃料についてはアメリカとブラジルは積極的に進めていますが、他の国はバイオ燃料に転用するのは反対の意見が強いわけです。そのなかでどういうコンセンサスを得ていくかということですから、地球環境問題への取り組みはじめ一定の成果があったと思います。


――茂木先生は「外交力強化に関する特命委員会」の事務局長をなさっていますが、これはどういうものでしょうか?


茂木◎いま日本の外交力が他の国と比べて相当劣っているという危機感から、政治主導で改革を進めようと森喜朗元首相が委員長になって様々な具体的提言を行っている委員会です。


 具体的には、いま海外にある大使館の数も決定的に少ないし、マンパワーも足りません。たとえば在外公館の数だけ見ても、日本は120ちょっとなのに対して、英米や中国では150公館体制です。これでは様々な外交案件で日本の立場、主張を働きかけるにも、どうしても限界があります。


 国内で年金をはじめとしたいろいろ大きな問題がありすぎて外交なんてという意見もありますが、資源小国、貿易立国である日本が世界の国々と伍していくためには、外交力を強めることは本当に大事なことです。必ず日本の国益に繋がるという思いで取り組んでいます。


――日本経済も景気の後退、あるいは踊り場経済などと言われていますが、「不安」という要素が大きくあって、日本経済が上手く回っていないと指摘されています。経営コンサルタントでもある茂木先生は、どう再生すべきとお考えですか?


茂木◎「不安」だけでは人を萎縮させるマイナスの要素しかありません。一方、「不満」は、現状を打開するためのパワーになります。問題点をしっかり把握して、そのマイナス要素をプラスに変えていく「発想の転換」が今の日本には必要です。


 いま日本経済が直面している課題は大きく分けて3つあります。その一つは、少子高齢化の進展です。これに伴い、社会保障費は急速に増大しています。1970年に日本の社会保障費は3.5兆円だったのが昨年は93.6兆円と約40年で30倍近くなっています。年金は70年ではわずか0.9兆円でしたが昨年は49.5兆円と50倍以上になっています。財政再建の最大にネックもこの増大する社会保障費です。


 同時に少子高齢化が進むと、労働力人口が減っていきます。わが国ではこの労働力人口が10年後には約440万人不足するのです。働く人が少なくなれば経済はシュリンク(萎縮)して停滞します。


 二つ目は、資源エネルギー価格の高騰です。これはサイクリック(周期的)なものではなく、構造的、恒久的なものになっています。いま世界の人口は65億人を超えていますが、30年後には90億人になると言われています。そして中国、インド、ブラジルなどの新興経済国がさらに経済成長することで、エネルギー需要、資源需要も増加します。資源エネルギーの高騰は、資源小国日本にとって極めて大きな問題になっています。


 三つ目は、日本の国際競争力の低下です。IMD(国際経営開発研究所)の調査では、日本の国際競争力は2006年に16位だったのが、07年には24位に転落しています。トップは2年連続アメリカで、中国は18位から15位、ドイツは25位から16位に伸びています。またWEF(世界経済フォーラム)の評価でも、アメリカは国際競争力もビジネス競争力も1位で、ドイツは5位と2位、日本は8位と10位といったレベルです。


 戦後の日本のリーディング産業を見ると、まず繊維産業があり、それが衰退すると造船と鉄鋼に変わりました。そして80年代には、電気、自動車が台頭してきました。ところが、この電気、自動車に代わる新たなリーディング産業はここ30年現れていません。それでも自動車はどうにか国際競争力を保っていますが、ITの分野では欧米に相当差を広げられています。


 この三つの要因はどれも非常に厳しいものがありますが、局面打開に必要なのは「発想の転換」です。


 たとえば少子化で労働力が不足するのであれば、健康な高齢者に労働力の担い手になってもらうのです。平均寿命を見ると、日本の男性は79歳で女性は86歳です。さらに何歳まで健康でいられるかという健康寿命を見ると、男性が72.3歳、女性は77.7歳でこちらも世界一です。シルバー人材の活用により440万人不足する労働力が賄え、かつ健康で働くことによって高齢者の医療費も少なくなります。たとえば、日本の都道府県の中で高齢者一人当りの医療費が一番多いのが福岡県で、少ないのが長野県です。逆にお年寄りの就業率をみると、一番高いのが長野県で低いのが福岡県です。健康と就業率は比例しているのが証明されているのです。高齢化社会を“健康現役社会”にしていくことで様々なプラスの変化が生まれます。


 エネルギーや資源についても発想の転換が必要です。日本は資源小国ですが、これだけ原油価格が高騰すれば代替エネルギーの開発もリーズナブルになります。


 日本はこれから環境技術立国を目指すべきです。実際、日本は省エネ・省資源の技術では他国を圧倒しています。エネルギー利用効率をみると、日本は欧米の2倍、中国の8.6倍、ロシアの17.4倍、世界平均と比べても3倍です。また資源の利用効率も、日本は欧米の2~3倍で、世界のトップです。


 特定にリーディングインダストリーを創るより、環境技術をあらゆる産業に埋め込んで国際競争力を確保していく。IT技術を活用してこのやり方で成功したのがアメリカです。IT革命は決してアメリカの情報通信産業だけを強くしたのではありません。その技術やシステムを通して、金融や流通業も競争力を回復しました。さらにはアメリカ企業の組織構造まで変えたといっても過言ではありません。かつて日本的経営に遅れを取っていたアメリカですが、ITで現場とトップマネージメントを直接つなぐことにより、マネージメント能力を大幅にアップさせることができたのです。


 日本も同じようなことを環境技術で行えばいいと思います。電気自動車や太陽光発電、あるいはバッテリーの開発です。スーパーコンピューターでもペタ(千兆)の単位の計算をする機械を支えるバッテリーの開発が競争の鍵を握ることになります。環境技術にさらに研究開発費を投入して付加価値の高い製品を作ると同時に、産業の国際競争力を高めていくことが必要でしょうし、可能なのではないでしょうか。


――ところで、4月9日に茂木先生は小泉元首相や奥田経団連前会長、自民党の小池百合子元防衛相、民主党の前原前代表や楽天の三木谷氏らと会合をもたれました。勉強会だとかスワ新党だとか騒がれましたね。


茂木◎いろんなところでいろんな議論をしています。党は違っても同じような考えを持っていたり、活発な政策論議をする政治家が与野党通じて結構いるのです。


 経済界からも、なんとか今の日本の閉塞感を打開したいという気持ちがあります。日々国際競争の荒波に晒されているなか、国会では審議拒否だとか問責決議など何をしているのかという思いにもなるのでしょう。ムダを省くのも必要なことです。タクシー券も年金記録も大きな問題です。しかし、そればかりを追及していても、日本は明るい国になりません。国際的に通用する国になりません。


――国会の大変な運営の中で、衆議院で厚生労働委員長をなさっています。まさに火中の栗という役割ですね。


茂木◎昨年、参院選前に自民党の筆頭副幹事長として選挙の実務を中川秀直幹事長の下で行っていたのですが、年金問題が最大の争点となって、私もテレビなどに出演して対応せざるを得ない立場になりました。参院選後の人事で、厚生労働委員会が厳しい、他に任せられないということでご指名があって委員長を引き受けることになりました。大変な役割ですが、日本の将来がかかっていますから、心して職責を果たそうと頑張っています。


厚労委.jpg
衆議院の厚生労働委員会で委員長を務める茂木代議士(右端)


――国会議員になられてお忙しいでしょうが、リフレッシュなどはどうされていますか?


茂木◎本当は何日かボーッとする時間が欲しいのですが、今はちょっと無理ですね。でも実はそういう時にこそ、ひらめきを感じたりするんです。私の1冊目の著書『都会の不満、地方の不安』の構想を考えたのもインドネシアのバリ島のビーチでした。


 ゴルフも好きです。会議室で閉じこもっていろいろ考えているよりは、体を動かしながら広いコースを歩いているほうがいい考えが出たりします。また短い時間でも、ジムやサウナで汗を流すのも気分転換になりますね。


――解散・総選挙の時期はどう見られていますか?


茂木◎これは総理がお決めになることです。ただ必要なことは、まず国民の皆さんが国政について冷静な判断ができる状況を作ることです。今はいろんな問題が重なり合っていますから、有権者の皆さんが「けしからん」だけで投票されるのではなく、日本の将来にとってどんな政策が必要なのかを判断していただくことが重要です。


 企業の評価で考えても、どのような会社に投資するかと言えば、ムダを省いて交際費も削減していますという会社ではなく、有望な技術を持って将来のビジョンが見える会社を選びますからね。国の魅力も本来、同じだと思います。


――有難うございました。(7月28日インタビュー取材)


茂木敏充衆議院議員のホームページ
http://www.motegi.gr.jp/