国民の汗に報いる“草の根保守”を提唱し、国民主導の行財政改革をめざす
荒井広幸参議院議員(改革クラブ)

あらい ひろゆき
1958年、福島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。87年、福島県議会議員
選挙で当選。93年、衆議院議員総選挙で初当選し、以後3期連続当選。2003年、
衆議院議員総選挙で落選。04年、参議院議員通常選挙比例区に自由民主党から
出馬し、当選。05年、自由民主党を離れ、新党日本を立党。07年、新党日本離党、
無所属となり会派「自由民主党・無所属の会」を結成。08年、民主党を離党した渡
辺秀央元郵政大臣らとともに新党「改革クラブ」を結成。
早稲田大学客員教授も務めた。
――荒井先生といえば、「郵政民営化」に反対の“行動する論客”として知られています。その後、「新党日本」を立ち上げ、そして今度は「改革クラブ」を結党しました。この混迷した政治状況や経済状態をどうご覧になりますか。
荒井◎今は世界も日本も漂流している時代といえます。第2次世界大戦以後の価値観を大転換(パラダイムシフト)させる必要があります。アメリカ型の「市場原理主義」=金が金を生む強欲資本主義が、結末を迎えているのです。こうなることを私は郵政民営化問題の時に、「市場の暴走」「市場の失敗」が起きると警告し民営化反対を訴えていた訳です。
郵政は、有事のセイフティーネットであり、平時のユニバーサルサービスなのです。金融面では安全第一で全国誰でもが少ない費用で公平に預貯金ができるシステムだったのです。このことを当時の小泉首相と何度も議論しましたが、国民にも解ってもらえませんでした。そして私は、努力不足と選挙中にもかかわらずテレビ放送の中で「荒井さんは失敗します」との小泉発言の影響もあって落選しました。
しかし、郵政民営化の法案が出されるので、急ぎ参議院選挙に転出して議席を得て郵政国会に臨みました。ほとんど選挙運動期間がなかったですね。参議院では「良識の府」として否決しました。今考えれば大英断ですよ。正しかった。それでも小泉内閣の圧力で、残念ながらこの法案は通ってしまいました。
――8月29日に「改革クラブ」が結成されました。そのなかで参議院の改革が一つのテーマになっていました。衆参ねじれ国会における「民主党の党利党略」と批判されていることに対するものなのでしょうか。
荒井◎参議院は第二院として「再考の府」「良識の府」という権威ある存在としてあるべきです。
戦後間もない「憲法国会」で、秋田三一という貴族院議員が「日本国民は熱しやすく冷めやすい。この前まで大政翼賛会と言って戦争の道に走って、今は民主主義だと言っている。衆議院は暴走しやすい。解散の圧力に弱い。そこで、国民に冷や水をかけ、衆院の暴走を食い止めるための冷静なブレーキ役が参議院である」旨を言っています。
だから参議院は任期も長く、解散はない。一人ひとりの良識が問われ、多くは無所属で当選してきました。院内会派「緑風会」の緑は、7色の虹の真ん中の色なのです。そういう理想があったのですが、当選するための現実によって政党化した。影響力を持ったのが労働組合であり業界団体で、高度成長時代に顕著になってきました。

「改革クラブ」発足の記者会見(8月30日)
その結果、参議院は衆議院と同じに、政党に牛耳られてしまいました。党利党略での国会運営が罷り通り、国民サイドに立っていない。「改革クラブ」では、党議拘束を一切行いません。政党の圧力に政治家が埋没しないようにします。参議院全体にその思想が広がれば、政治が大転換し日本は良く変わります。
例えば、命をかけて国会で戦争に反対した斎藤隆夫、永井柳太郎などは早稲田の雄弁会の先輩ですが、そういう人たちに学び言霊(ことだま)が生きる、権力でなく権威の府、参議院にしなければならないのです。
10数年前の政治改革では、衆議院の小選挙区制が実現しましたが、参議院の選挙制度をリンクして考えていなかった。「権威の府」にどう近づくべきかも忘れた。そのシワ寄せがいまの閉塞感を産んだ一つの原因になっている。衆議院は新たな中選挙区にすることですね。
これまでの政治システムは、経済システムの追認の役割でした。すべてに経済が優先。経済優先社会の矛盾が、アメリカの暴落を招いている。今、人間本来の生き方や価値、地球温暖化のように自然との共生が問われています。今、猛省が必要です。市場原理主義一辺倒から、実体のある、汗が報われる社会経済システムに変えていかなければなりませんね。
――この10月15日と16日の参議院予算委員会での麻生首相に対する質疑は、その意味でも含蓄のあるのものでした。
荒井◎有難うございます。手前味噌になりますが、衆参予算委員会のNHKの視聴率は大抵1%の後半ですが、小泉さんの時は3.4%、福田さんの時は3.6%で今回は3.8%だったと聞きました。国会での発言は、言霊がみなさんに伝わるように、と思ってやっています。
私は、国民一人ひとりの汗に報いる“草の根保守”を実現しようとしています。今の日本は、なぜ親が子を殺し、子が親を殺すのか。なぜいたるところでひずみやゆがみ、悲鳴が上がっているのでしょうか。私は、麻生首相に対して「小泉改革の光と影を認識するか」と問いました。首相は「認識します」と明確に答えた。その総括があって、はじめて次の展望が拓けるのです。期待したい。
政治には、原因対策と結果対策があります。小泉改革の何が良くて何が悪いのかをちゃんと認識しなければ、ただ取り繕うだけの弥縫策(びほうさく)で問題は解決しない。原因がわからなければ同じことがまた起きる。結果対策は、対症療法でしかありません。
そこで私は、「G8プラス新興国を入れたサミット」を提案しました。世界全体が市場、経済の暴走の中にある時、表面の結果対策をするのではなく、みんなが手を携えて一つの新しい価値観を共につくり上げ、お互いが助け合って生きてゆく社会経済システムを構築すべき“有事”なのです。日本が世界をリードしなければできません。その気概が欲しい。
――年金問題をはじめとして、いろいろと政治課題がありますが、自民党や民主党の対応はどうでしょうか。
荒井◎政府自民党は「年金宅急便」を出すといっていますが、これも原因対策にはなりません。私は4年前から『年金通帳』を提案しています。毎月入金を記録すると払い忘れや改ざんは起り得ません。1年間に17万2920円を納めると、その1.7倍の29万3964円受け取れ、国の負担は12万1044円になりますと、ひと目でわかる通帳を国と国民の契約書とする。それを手もとにおけば、いつでも確認できるので安心。

『年金通帳』を説明する荒井参議院議員
年金に対する信頼性が問われて久しく、あの不良債権問題では有効打を打った自民党の対応は遅い。残念です。民主党も年金の不備なところだけを言って危機を煽っているだけではダメ。小沢さんは、自民党の中では政権はとれないから、野党を巻き込んでその野望を実現しようとしているのでしょう。私欲です。
私は何度もこの提言をしています。具体的な法案になる提案をしているわけです。政府は採用すべきです。
――『年金通帳』のほかに「公金検査請求・国民訴訟法案」のご提案をなさっていますね。
荒井◎これも提案してから3年になります。いま地方自治体では、訴えの利益がなくても損害賠償請求や不当利得返還請求が行えます(住民監査請求、住民訴訟制度)。しかし、道路特定財源によるマッサージチェアの購入や、社会保険庁職員による改ざん問題など跡を絶たない国費のムダ遣いや不正支出については、国民がこれを直接糾す仕組みがありません。これを早急につくるべきなのです。
法案の骨子までつくった提案に麻生首相も、「国会で議論して欲しい」と一歩前進。国民主導になって初めて国民主役の行財政改革が行われるのですから、麻生首相も国会も賛同すべきでしょう。
――忙中閑ありですが、あいた時間はどう過ごされていますか。
荒井◎「絵手紙」ですね。心を伝えるにはいい方法です。岡倉天心の思いとそれを形にする横山大観の絵が好きです。日本のものに立脚した物の見方に共感してます。
それから読書ですが、書店なんかでザーッと立ち読みして“今”を感じ取れる。音楽は、ヨー・ヨー・マのチェロがいいですね。
――ありがとうございました。
荒井広幸参議院議員のホームページ
http://www.arai-tv.jp/






