「1000円債権」であこぎな回収を続けるRCCの実態
「なぜ、明かさないのか。今もって不思議でなりません」
と話すのは、西日本で不動産会社を経営するAさん(57)である。
バブル時代に、手広く不動産業を拡大。旧住専からも、多額の資金を調達していたAさん。だが、旧住専の破綻。その処理に整理回収機構(以下RCC)が発足。お決まりのように、その過程でRCCとの紛争に突入したのだった。
Aさんが、徹底して追及したのは、RCCがいくらでAさんの債権を買ったのかだ。
「RCCの商品というのは、債権。その仕入れ価格がいくらなんだということです」
とAさんは話す。
商売の常識として、安く仕入れて高く売るという行為はごく当然だ。その部分は、企業として最も重大な「機密」であることは間違いない。
RCCは発足当時、銀行免許で運営されていた「銀行」だった。今は、それに加えて債権回収業の許可も取得している。その原資は国民の税金であり、しかもRCCは預金保険機構が100%出資。国民の税金で成り立っている。それゆえ「国策会社」と言われるのである。
Aさんが所有している不動産は郊外に立地しており、周囲には多数の分譲マンションが立ち並ぶ。最寄り駅まで、徒歩数分。周辺はほとんどマンション群。建設の余地があるのは、もうAさんの所有地くらいしかないという。
地元業者はだけでなく、大手ゼネコンまでがごぞって譲渡を打診するほどの物件だという。
当初、Aさんはその物件を自らの手で売却ようと試みた。しかしRCCと折り合いがつかず、結局、RCCが売却先を探すことになった。
当初は10億円は超えると見込まれていた売却金額。しかし、なかなか売却先の候補と折り合いがつかない。その過程で、RCCは一貫して「10億円以上」という売却価格を設定していた。
その話を、たまたま懇意になったRCCの社員から聞いたという。
「仕入れ価格の20倍が最低ライン」
そうRCCの社員は話したという。
Aさんが所有し、RCCが抵当権を設定している不動産。10億円以上と見込まれるものが、元は5000万円程度で買っていたことになるのだ。
これは、RCCではごく常識のようにあることだ。国会でも問題になった「1000円債権」。無余剰・無担保の債権をRCCが買い取る場合は、1件あたり1000円で銀行から買い取るというもの。本来なら、とても回収見込みがない債権だが、RCCは国策会社という印籠を手に、1件平均で600万円を回収していたというものだ。1000円が600万円に化けるのだ。
私がかつて追及し、中坊公平元社長が辞任弁護士廃業に追い込まれたきっかけとなった大阪の泉北ホテル案件をめぐる、RCCの詐欺的回収事件。この時も、舞台になった泉北ホテルの土地は、1億円程度の仕入れ価格だった。だが、実際にRCCが回収をもくろんでいたのは50億円以上。実際には20億円近い金を手にした。
その後に追及され、別の債権者と和解したために20億円は減ってしまったが、一時はそれだけ回収していたのだ。
また、2001年10月23日の日経新聞によれば<整理回収機構が都市銀行などから買い取った不良債権のうち、53・5%の買い取り価格が「1円」であることがわかった>という記事もある。
現役サービサーマンによれば、 「RCCから、サービサーに不良債権が売却されます。ひとやまいくらって感じですね。その仕入れは、普通のサービサーよりずっと安く、1円って物件もかなりあるように聞いています」と、記事を裏付ける証言をする。
Aさんはそこで、債権回収にまつわるさまざまな書類を読んでみた。その中の一つに目がとまった。法務省がサービサー制度の概要を説明した<債権管理回収業に関する特別措置法施行規則の概要>という条文だ。そこには、こんな下りがある。
<債権回収業
債権管理回収業務を行うに当たり明らかにすべき事項(10条関係)
債権回収会社が業務を行うに当たり,債務者等から請求があった場合に説明すべき事項として,債権回収会社の管理又は回収の権限の基礎となる事実等を規定している。>
Aさんはこう話す。
「これを根拠に、仕入れ価格を明かせとRCCに詰め寄りました。何を根拠に回収ができるのか、その事実を証明し、説明しなければならない。そこには、もちろん仕入れ価格も含まれるべきなのです。5000万円が何十億にもなる回収が許されるのか」
RCCと戦い続けている椎名麻紗枝弁護士は、かねてからこう訴える。

椎名麻紗枝弁護士
「法律で、仕入れ価格、買い取り価格がいくらなのか、情報を開示すべき。とれそうもない相手からとらず、そこで出た赤字を埋めようと、少しでもとれそうなら、仕入れ価格の何倍、何十倍もとり、破産するまでその相手を追いかけてとってしまう。開示をすれば、あこぎな回収はできない」
Aさんの会社の整理はRCCの手によって着々と進んでいる。だが、白旗をあげるつもりはないという。
「国がですよ、明かさず、どんな情報公開をしてもわからない、そんな仕入れ価格で暴利を貪っているというのが許せない」
Aさんは最後まで戦う覚悟を決めている。





