債務者の名湯旅館で割引宿泊&飲食、整理回収機構の“非常識”を問う
「予約もなしに、急に泊まらせろと言い、酒飲んで、ぐでんぐでんになって、金もきっちりと払わない。RCCって、こんな無茶をやっても通るんだなと思うと、本当、無力感でいっぱいです」
と悔しそうに話すのは、栃木県日光市の川治温泉にある老舗旅館・柏屋ホテルの運営会社、湯けむりの里柏屋社長・平田正春さんだ。
川治温泉は、鬼怒川温泉に隣接する、栃木県では指折りの温泉場の一つだ。その中でも、柏屋ホテルは、創業1926年(大正15年)の老舗。客室数67室、約300人が収容でき、川治温泉を代表する旅館だ。

柏屋ホテル
その経営が窮地に陥ったのは、03年にメインバンクの足利銀行が経営破綻したことにはじまる。約28億円の債権が、昨年2月に整理回収機構(以下RCC)に譲渡された。 柏屋ホテルとRCCの間で、何度も交渉が持たれた。しかし、なかなか交渉は進展せずRCCは、今年2月15日に宇都宮地裁に柏屋ホテルの破産を申し立て。2月21日に決定された。
問題なのは、決定した2月21日のことだった。昼過ぎ、柏屋ホテルにRCC宇都宮支店の弁護士、支店長、副支店長、破産管財人の弁護士、その補助者が続々と集結しはじめ、計20人となった。
「みんなして、宿の経理伝票や帳簿、銀行の預金通帳などを見せるように要求され、弁護士を先頭に、作業をはじめました」
と平田さんは振り返る。
そして、3時ごろだった。急に、破産手続の管財人である、白井裕己弁護士から、
「部屋を用意してくれないか」
と要請された。平田さんは、あわてて、フロントに予約状況を聞き、準備に奔走しはじめた。
元々、入っていなかった予約。2月の冬季の閑散期の平日。食材や人手がない。部屋や宴会場、食材の確保から、板前や調理補助、仲居さんの調達。てんてこまいの忙しさだったという。
それでも、なんとか先付、前菜から刺し身しゃぶしゃぶと10品以上の料理を揃えたという。なぜか、スーツ姿で宴会場に現れたRCCや管財人の一行は、満足そうに食事をしていたという。
「その後、部屋の冷蔵庫ではビールが10本くらいと、ウィスキーもあいていた。べろんべろんに酔っぱらって、温泉につかっていました」(平田さん)
そして、翌朝のことだった。20人中、8人が料金の清算のためにフロントに立ち寄った。フロントの担当者は、平田さんなどから、料金の指示を受けていなかった。
「RCC分ということで、一括して伝票を作成していたのです」(平田さん)
だが、8人は個別に料金を支払うという。そこで、バスの運転手や仕入れ業者向けの料金設定があると言うと、RCCの職員らは、
「そうしてほしい」
ということで、消費税や入湯税込みで一人1万円、部屋で飲んだビールやウィスキーは20%割引という料金にしたという。
領収書はなぜか、個人名で書くことを要求され、手書きで1万円の領収書を渡したという。
だが、業者向けの割引料金というのは、料理もフルコースが並ぶことはない、簡単なものである。RCCや管財人に出されたフルコースだと、税金込みで1万6950円というのが柏屋ホテルの正規料金。
「私たちとしては、RCCが権力をカサに6950円を踏み倒したと思っている」
と平田さんはそう訴える。
RCCや管財人は、当初、2月21日以降は営業させないという意向を示していた。にもかかわらず、自分たちは豪勢な食事に舌づづみをうち、温泉にひたるというのは、道理にあわない。
川治温泉から車で10分ほどのところには鬼怒川温泉もあり、周囲にビジネス旅館のような宿泊施設もある。また、RCCや管財人の作業は深夜までかかっていた様子はなかったという。部屋では、ビールやウイスキーを飲み、酔っぱらっていた。高級旅館に宿泊する合理的理由は見当たらない。
4月23日、民主党の前田雄吉衆議院議員が、衆議院決算第一分科会でこの問題をとりあげた。
<きちんとお金を払われればいいですよ。もちろん、お客さんと同じものを食べて、お客さんと同じ部屋に泊まっている。これは1万6950円です。しかし、翌日、チェックアウトのときには、何と1万円にまけてくれと、1万円しか払わない>
また、RCCが破産管財人の補助者として参加していたことに対しては、
<中立、公平性を求められるという観点からしてやはり問題>
と指摘している。
RCCの職員は4月になっても、毎日、2名程度が柏屋ホテルに宿泊を続けている。平田さんによれば、延べ200人近くが宿泊しているそうで「まとめてはらう」と料金は支払われていない。
「2月21日の宿泊時にも、宿帳の記載をしていません。厳密に言えば、旅館業法に触れるはず。うちは1週間単位で入湯税を税務署に支払っています。これも、立て替えで払っている。こんな連中が、国策会社、天下のRCCだとえらそうに言われるなんて、我慢なりません」
と、平田さんは訴える。
この「傲慢さ」を、次号でさらに追及する。




