【座談会】暴挙が続くRCCの債権回収と問われる存在意義(下)
(出席)
前田雄吉衆議院議員(民主党)
椎名麻紗枝(弁護士)
北健一(ジャーナリスト)
司会/今西憲之(ジャーナリスト)

今西 3人の裁判官がいて、それとは別に裁判官がいる。合計4人。本来の合議体、いわゆる裁判を指揮する3人とは関係ない、裁判官。傍聴席で見ているとかじゃなくて、法廷に入っている。それが宇都宮地裁の園尾所長。こんなこと、あるんでしょうか?
椎名 おかしいなと思って、2月の審尋手続に出席していた弁護士を通じて、宇都宮地裁に聞いてもらったのです。私が聞くと、相手が警戒するでしょうから。(笑い)
北 なんといっても、椎名先生ですから。(笑い)
椎名 裁判所は最初、とても困ったような対応で、ちょっと待ってくれと、書記官は言ったそうです。何度かやりとりがあって、書記官の補助をするということで、園尾所長が同席したと説明しました。所長が書記官の補助だなんて聞いたことありません。おまけに、園尾所長は約20分くらい柏屋ホテルの社長に破産者という前提でいろいろと尋問しています。
前田 園尾所長というのは、新破産法の制定に法務省でかかわった人です。『新版破産法』という共著まであります。本来、裁判を裁く合議体の3人に大きな影響を及ぼす。上司が法廷でにらみをきかす中で、裁判官の独立を保てるわけないですよ。公正な裁判なんてできやしない。

前田雄吉衆議院議員
北 園尾さん、所長ですからね。合議が右と言っても、おれが左だといえば、園尾さんが勝っちゃうでしょう。これは、原告と被告が争う一般的な民事事件ではありません。いくらRCCが絵を描いたとはいえ、破産管財という裁判所が深くコミットする事件。より裁判所は中立を保たなければならない。
前田 “ミスター破産法”だから、自分の出番だとでしゃばったんじゃないのでしょうか。
椎名 園尾さんは、ミスター破産法ですし、RCCという国策会社が絡み、任せておけないって気になったのでしょうか。ただ、園尾さんの同席を認めた合議体にも問題がありますが。
今西 自分の得意分野だから、俺も法廷に入れろなんてやると、もう日本の裁判はめちゃめちゃになります。こんなことが認められたらね。園尾所長の『新版破産法』では、1カ月もあれば破産手続きが完了するとある。今回の、柏屋ホテルも実際にそうなった。そこに、RCCと裁判所という国家権力の癒着を感じてしまう。
前田 1969年、長沼ナイキ訴訟において、当時の平賀健太札幌地裁所長が、事件の担当の福島重雄裁判長に対して、判断の一助という前提を置いて書簡を送りました。俗に言う平賀書簡。書簡を送っただけ大事件になった。今回は同席で、質問までしているのです。
北 憲法七十六条三項の「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」という定めに反している。裁判官の独立を侵害しています。
前田 新破産法を勉強してみた。すると、教科書には「債務者は悪質で、隠匿したり、持ち逃げする」と書いてある。最初から、悪質と決め付けている。
椎名 こう書くと、潜在的に債務者イコール悪というイメージを植え付けてしまう。破産することがそんなに悪いのか。誰も、破産したくてやっている人はいないんです。やむにやまれずですよ。

椎名摩紗枝弁護士
北 だから、園尾さんも20分の質問で、最初から破産を前提にして、聞いたのでしょう。
今西 園尾さんからみれば、悪質な連中。だから、自分が裁いてやるって、意気込んだんでしょうかね。(笑い)
北 もっと他で意気込をみせてくれたらよかったのに。
椎名 園尾さんは「軽率だった」と認めているそうですよ。
前田 要するに、RCCという国策会社であり、1企業の利益のために破産管財をしているわけです。裁判所が中立であることは小学生でも知っている。
今西 それが園尾さんは「軽率なこと」をしたとなれば、辞めてもらうしかありませんね。
椎名 管財人に柏屋ホテルの運営会社の平田社長が呼ばれて行ったことがあります。今年の1月だったでしょうか。夜7時くらいに、いろんな問題で紛糾した。すると管財人が裁判所に電話をしたのです。裁判所に夜7時に電話しても普通はつながらない。しかし、そのときは応答があった。「今、電話かわりましょうか」と管財人が言うと「まずいよ、それは」という男性の声がした。それが、園尾さんの声だったのではと平田社長は言う。ホットラインがあるのです。
前田 園尾さんというのは、最高裁を代表して、新破産法の答弁を国会で行ったことまである。それが「ご指導」しているんですよね。RCCが絵を描いて、管財人と裁判所が一体化しています。
椎名 そこにもう一つ疑惑がある。柏屋ホテルの譲渡先が元RCC社長の奥野弁護士と非常に関係が深い会社なのです。譲渡先は、スターツアメニティー株式会社。5月に宇都宮地裁は、事業譲渡に関する基本合意書の締結を許可しています。
前田 スターツアメニティー、破産手続開始決定の申立人、RCCの元社長、奥野善彦弁護士の法律事務所が顧問をしています。RCCが破産申し立てをして、譲渡先に、元社長と関係が深い会社に決定した。
今西 要するに、奥野弁護士、RCC社長でありながら、RCC絡みの案件で事務所が商売しているという構図ですね。あきれますね。
北 2004年4月から社長なんですから、RCCには部下もいる。奥野さんがRCCに誘ったような弁護士もいるでしょう。これが、国会議員だったら新聞の1面でめちゃめちゃ叩かれますよ。弁護士が、RCCの役員に就任したり、顧問弁護士になる場合、RCCと利益相反になりそうな会社の顧問になっていると、辞めるか、一筆とることにしている。奥野さんの場合は、利益相反ではありませんが地位利用の疑いがありますね。
前田 こんなの「犯罪行為」ですよ。自分のところで破産させて、自分の息がかかったところに引き取らせる。当然、儲かるからやってるんですよ。
今西 いくらもうかるからって、何をやっていいのか。RCC社長として国策会社から給料をもらっている。税金ですよ(?直接には税金ではないと思いますが?)。そんな自覚が全然、ありませんわ。その代表が中坊元社長なんて、RCCが「給料払っていました」と回答しているのに「もらってない」と頑なに言い通す。税金を何と考えているのか?
北 その時のキャッチフレーズが「血も涙もある回収」。ええ格好しいにもほどがあります(笑い)
今西 結局、破産法で事業化するということは、極論すれば会社更生法はもう必要ないということになりますね。
前田 破産法を使うと、地域の出入業者は売掛金がほとんどもらえない。泣き寝入りです。川治温泉という小さな温泉場にとっては、死活問題。地域の根底を揺さぶることになります。
椎名 川治温泉だけでなく、隣の鬼怒川温泉でも同じようにRCCの債務でどうにもならない旅館、ホテルがあります。RCCのひどい手法は、温泉地を破壊することになってしまう。
前田 これは、全国の温泉地にも波及しますよ。もう、日本に温泉地はいらないのかってくらい、深刻な問題。
椎名 群馬県の水上温泉のホテルの女将さんから連絡があった。柏屋ホテルと一緒で運営会社方式で、経営していた。しかし、破産を申し立てられ、管財人やらがどやどやとやってきて、帳簿を取り上げられ1週間でホテルは閉鎖。
北 閉鎖ですか? 柏屋ホテルは閉鎖まではしなかったが……。
椎名 管財人から経営者は、自己破産をしろと責められ、心労からアルコール中毒。女将さんも仕方なく、ご主人と離婚。3人の子供を抱えて、とりあえずは食べていかなきゃと、雇われ女将で再出発するという。一家崩壊ですよ。
今西 本当にこれは氷山の一角。我々の知らないところで、たくさん同じようなことが起こっているはずです。血も涙もあるといいつつ、実際はその反対。旧住専問題、破綻金融機関も一段落。RCCというのはもう不要じゃないでしょうか?
前田 ここではっきりさせたいのは、RCCというのは諸悪の根源であるということです。
北 RCCのデータをいろいろと調べてみました。平成16年度の決算で、助成補てん金という項目があり、1185億円という莫大な金額。

北 健一氏
今西 どうみても、税金の投入。中坊元社長は「二次負担はかけない」が大きな目標だったはず。すでにかけていると。
北 一方で公的補助をもらいながら、利益を上げて国にたくさん納付しているから、頑張っているからという説明というか、まやかしな広報をしている不思議な会社。しかも住専勘定は大幅な債務超過ですから、国民の二次負担が生じる可能性が高い。
今西 RCCの原資は税金。しかし、運営は銀行免許とサービサー免許。そのくせ、弁護士に検察、警察、国税、裁判所などの出身者が集まる。本来なら、相反する立場の人間たちが、一緒にやっている。
椎名 債務超過なんですから、普通の民間会社ならつぶれています。RCCだけを特別扱いで、税金で存続させる必要はありません。
北 当初、民主党は「アメリカのRTC(整理信託会社)をモデルに」と考えていた。公的機関で調査権を持つが、5年で解散するという。これを、中坊さんと当時の大蔵省が永久に続く会社にした。
前田 おまけに、公的なのか民間なのかよくわからない性格にしてしまった。国会に責任者を呼ぼうとしても呼べない。チェック不可能な機関に、中坊さんと大蔵省がしてしまった。
今西 椎名先生はよく「RCCは債務者を丸裸にする。余剰は残さないと」。これは安倍総理の「再チャレンジ」の政策からするとおかしなこと。余剰がゼロなら、再チャレンジなんてできません。
椎名 年金までそのうち、おさえかねない。いや、知らないところではあるかもしれません。
北 国策会社なのに、内閣の方針にまでそむいていると。(笑い)
今西 今にはじまったことじゃない。(笑い)
前田 今、公務員改革制度をどうするのか、論議になっていますね。税金を投入したRCCは、弁護士のハローワーク。公務員改革と同じ構造なのです。回収にたくさんの費用をかけて、多くを回収。国民から丸裸にした回収で誰が喜ぶのか。実は国民じゃない、弁護士やわけのわからないRCCのまわりにいるコンサルタント、不動産業者などでしょう。
椎名 これ以上、RCCを放っておくと、とんでもない社会になるような気がしてなりません。というのも、案内業務として、携帯電話や住宅ローンの延滞など、サービサーがいろんな債権回収に乗り出しています。いずれ、RCCも存続するために、そちらに進出する。
北 わかりやすく説明すると、収入がなかったり生活苦から年金を払えずに3カ月未納したとする。突然、電話があり「RCCだけど、年金払え」と社会保険庁の代わりにサービサーが乗り出してくる。携帯電話の料金もそう。払えなければ差し押さえだと。規制改革の審議会にも、サービサーから「徴税業務を民間開放せよ」という要望が出ています。
椎名 おそらく、永久に存続するためにはその方面の進出を狙っていますよ。今西 国策会社ですから、国民年金とか、国民金融公庫とかの回収なんて、とりにいくんじゃないでしょうか?
北 RCCは平成11年度から、健全銀行から債権を買って回収する、金融再生法53条でもうけてきました。「紙くず債権」を札束にかえてきたわけですが、国会やメディアに追及されて、それができなくなってしまった。生き延びるには、新しい儲け口を作るしかない。
前田 それはもう国策会社のすることではありません。不良債権処理ということでいえば、完全に使命を終えています。産業再生機構なんて、任務が終わればあっさり退場した。
北 産業再生機構は前倒しで解散ですよ。その幹部は「我々がここまでやれば、RCCも考え直すだろう」って。いつまでも居座って市場を撹乱すべきじゃない、そろそろ身の処し方を考えろというメッセージでしょう。
今西 考え直すような組織じゃない。それができるなら、血も涙もある回収ってことくらいはできますから。
椎名 破産法を盾にするなど、今も無理にいろんなビジネスモデルを模索し、実行している。
今西 それはビジネスモデルじゃなく、回収モデル。これ以上、RCCの手法がモデルになったら、えらいことです。
前田 はっきり言っておきますが、もし政権交代したら、RCCは即、手をつけますよ。まず、悪事を徹底して公にします。あちこちで、破たん金融機関や、債務者の悪事を告発しながら、自分たちの悪事は認めない、隠す。
今西 前田先生「もし」じゃあかん。「必ず」ですよ。(爆笑)
前田 そうだ、そうだ。
椎名 苦しんでいる債務者は、全国各地にいます。私たちが把握している方はごくわずか。なんとか、早く手をつけていただきたいです。
北 RCCが振りかざす「銀行の論理」、回収の極大化では、生きた事業がつぶされていくばかりです。中小企業の再チャレンジを妨害するRCCは、いいかげん市場から退場すべきだと思います。
前田 いや、本当に重責です。
今西 それほど、RCCの横暴はひどいということです。どうも、ありがとうございました。




