RCC設立に関わった元官房副長官さえ泣かされている“血も涙もない”取り立て
「今思えば、委託状っていうのかな。渡さなければよかった」
と悔しそうに語るのは、元衆議院議員の渡辺嘉蔵さん(79)。
机や本棚には、大量のファイルが並べられている。あちこちに「RCC」という文字が書かれてある。
1996年7月、渡辺さんは社会党(当時)の村山富三総理の元で官房副長官という要職にあった。
「当時の村山総理から『ちょっと忙しいので頼むよ』と言われてやってきたのが中坊公平氏。『私は血も涙もある回収をしますから』と飄々とした感じで話しておった。この人ならやってくれると思っていたら、とんでもない人だった。本当に失敗」

とんでもない人だった……中坊氏
そう続けた。
渡辺さんは、労働運動を経て、岐阜県議、衆議院議員を歴任。現在は岐阜市で「ゼイケイ」という協同組合を主宰している。
「委託状を渡した私が、RCC問題に巻き込まれるとは、思いもしなかった」
と振り返る渡辺さん。
それは、1997年に地元の東海信用組合(以下、東海と記す)が破綻したことにさかのぼる。東海は、1967年に岐阜綜合協同組合と岐阜商工企業協同組合に加盟している企業組合の資金確保のために設立された。
個人事業主や中小企業がいくつか集まって企業組合を結成。企業組合同士が集まって、信用組合がつくられた。煩雑な会計、税務処理などを企業組合が請け負い、税金も安くなるという恩恵もあり、相互扶助的な役割を担っていた。
当初、そのシステムに大きな問題はなかった。しかし1975年ごろから、東海を実質的に牛耳っていた、元岐阜県議の杉本武夫氏(故人)が、自分の特定の事業について、東海から次々に融資を引き出した。杉本氏は、協同組合の「ボス」でもあり、東海は意のままに、金を杉本氏に還流させた。
さすがに度が過ぎたのか、監督官庁の岐阜県が東海に対して検査に入り、融資の見直しを要請。すると、杉本氏は、東海から企業組合の融資させ、次に協同組合に融資し、自分の事業に転用する、迂回融資をはじめた。企業組合が融資を受ける場合、組合員は東海とのあいだで連帯保証をさせていた。いわば、人による保証だ。杉本氏への迂回融資は約50億円。その事業は頓挫し、東海も破綻した。
杉本氏の迂回融資は、企業組合を経由したものだ。組合員は杉本氏のために、名義貸しのような形で東海から融資を受けた。
「迷惑はかけないから」
と今も多くの組合員がそう説明を受けたことを記憶しているという。
「その火の粉がこちらに及ぶとは、最初は考えもしなかった」
と渡辺さんは言う。
東海が破綻後の、1998年にRCCの前身、整理回収銀行は、連帯保証人になっていた元組合員201人に総額28億円の支払いを求める民事訴訟を岐阜地裁に訴えた。その後、整理回収銀行がRCCと合併したため、現在はRCCが原告だ。
「迂回融資は1977~78年ごろなんです。杉本氏はまったく返済をしていない。本当は東海も、組合員に返済を求めなければならない。しかし、それもしていない。長く放置されていたのです。それをいきなり、28億円だなんて無茶です。被告の組合員の中には、1億円を超す請求がある人もいる」
と渡辺さんは怒る。
被告の数が多いことや高齢者の割合が高いこともあって、裁判は長期に及んだ。そして2005年4月、岐阜地裁は9億3000万円の支払いを命じた。
その膨大な判決文を読み進めると
<東海の破綻は杉本氏の主導>
<組合員は杉本氏の被害者>
<組合員の意思確認なら融資が実行>
という趣旨の記述もある。
しかし、判決は杉本氏への迂回融資の2割を元組合員に返済するように判決を出したのである。
「裁判所が杉本氏の不正や勝手、傲慢な融資を認めた。それ以外にも、諸般、もっと考慮すべき事情もある。これをみてほしい」
と渡辺さんが差し出したのは、岐阜県が東海と杉本氏の迂回融資を捜査していた、岐阜県警に提供した「検査報告書」や「通知」などである。
1991年の検査報告書には東海が「貸出金及び利息が長期に延滞し、実質赤字」という報告が書かれている。
貸出金とは、杉本氏の迂回融資も含まれ、組合員が返済しないために利息まで延滞しているという意味なのだ。杉本氏は迂回融資の時に、組合員に返済させることはないと約束しており、実際に金を借りておらず、手にしていない組合員が返済することもない。「法令違反」とも検査報告書は指摘している。
「こんな状態は10年以上も続いた。それを放置した岐阜県にも責任がある。金融監督する立場の金融庁や財務省も検査に入っているんだから。それには目もくれず、保証人やから返せという裁判所の判決やRCCの姿勢は腹が立つ。悔しい。私が政府の責任ある立場の人間として、設立にかかわったRCC。ほんとに、血も涙もなかった。なぜ、あんなのを認めてしまったのか、情けない」
と渡辺さんはため息をつく。
現在、名古屋高裁に控訴し、その和解手続きが継続しているが、なかなか進展しないという。
渡辺さんや組合員の声は届きそうもない。




