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2008年12月01日

周囲の住民まで巻き込んだRCCとコモンズヒル北山

RCCとの係争のはじまり


 岐阜市の郊外に広がる、広大な分譲住宅地。モダンな洋風の住宅がところどころに点在し、分譲途中であることが一目でわかる。だが、分譲地を走る道路を進むと、枯れ草が茂り、手つかずの土地が奥手には広がる。


 岐阜県岐阜市の分譲住宅地、コモンヒルズ北山。ここが事件の舞台になったのは、今年9月のこと。


 実際の土地より広く不正に登記申請させたとして、不動産開発会社「グリーン産業」社長・中村満被告や、かかわったとされる土地家屋調査士、法務局の登記官らが公電磁的記録不正作出・同供用の疑いで名古屋地検特捜部に逮捕された。中村被告の関連会社が所有する39㎡の土地を5万9253㎡として虚偽の「地積更正」登記を岐阜地方法務局に申請し、法務局の登記官に登記させた疑いだ。


 たった、39㎡の土地が1500倍もの広さに突然、かわるという魔法のような登記。このようなことが、法務局でありえるのだろうか。


 11月20日に名古屋地裁で開かれた初公判。5人の被告のうち、中村被告を含めて、2人の登記官は無罪を主張。残る二人の登記官も「起訴事実は争わない」としたが、「虚偽の申請という認識はなかった」とする異例の展開を見せた。


 その背後には、整理回収機構(以下RCC)の存在がある。


 中村被告は、平成7年ごろからコモンヒルズ北山の開発に着手した。開発面積32万㎡、分譲戸数約800戸という大規模なプロジェクトだった。事業資金は、三和銀行(現在の三菱東京UFJ銀行)から融資を受けた。


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コモンヒルズ北山案内所と分譲住宅地


 開発がはじまり、一部の分譲を始めた。その売却益で融資を返済しながら、すべての開発をするという合意があり、平成10年から13年に売却益から約15億円を返済していた。


 だが、平成14年、三和銀行は住宅販売の需要の縮小や景気動向などを理由に融資をストップ。融資残高は64億円に達していた。そして、平成15年4月に三和銀行は債権をRCCに譲渡したのだった。金融再生法第53条に基づく健全金融機関からの債権買取だと見られる。


 そこから、中村被告とRCCの係争がはじまった。中村被告は三和銀行との約束通り、分譲しながら、継続的に返済すると主張。だが、RCCは一括の返済を要求。話し合いは頓挫した。中村被告が返済に応じないとみるや、破産や差し押さえなどの法的手段に打って出た。


「地籍更生」のカラクリ


 コモンヒルズ北山は、山を切り開いて開発された分譲地。当初は登記から、8万坪程度とされた。しかし、実際に開発してゆくと、実際の面積より大きくなることがあるという。山なので正確な測量、登記が難しいためだ。また、開発が大規模ゆえ予定していた開発地域の周囲も買収していたという。


 その結果、登記上では8万坪の土地が、開発すると10万坪に広がったのだ。そこで「地積更正」という手続きが必要になってきた。


 地籍更正とは、土地の登記面積と実測面積が違うときに行うもの。実際に測った実測面積と登記面積の相違は珍しいことではなく、更正して実測面積に訂正する手続きのことだ。阪神大震災のような災害や、土砂崩れなどでも起こることがある。


 中村被告も、開発地の土地の登記面積と実測面積が違ったために地籍更正を実施した。39㎡の土地に隣地承諾方式という手法をとった。前述の開発のために取得していた周囲の土地に広くなった土地を合わせて登記して、地積更正を実施。最後は登記官が現地調査を実施した後、登記が完了した。


 その際、土地の名義は中村被告のグリーン産業ではなく、その関連会社であるミドリーノ名義にした。地籍更正には一般的にそれが、今回の容疑となっているのである。


「まったく罪は犯していない。登記官と共謀して登記したというが、起訴された登記官のうち実際に詳しい話をしていたのは一人だけ。起訴された登記官の中には、顔や名前も知らない人もいる。共謀のしようがない」


 と弁護士にあてた手紙では主張している。


 当初から、地籍更正が必要になることがわかっていた中村被告。法務局と打ち合わせを何度もしていたという。実際の地籍更正の際にも、現地調査を法務局は実施。確認したうえで、登記された。


「最初、名古屋地検特捜部は、登記官と中村被告の間で贈収賄があると見ていた。1500倍も土地が広くなるわけですからね。しかし、実際に逮捕してもまったく、何もない。それどころか面識すら危うい。完全に読みが外れた。それゆえ、地検の事件では珍しい公電磁的記録不正作出・同供用の疑いという比較的、軽い容疑にとどまっているのです」


 と地元のマスコミ関係者は言うのだ。


あの手この手のRCC


 事実、この事件は岐阜県警もRCCからの告発で捜査に乗り出したことがある。しかし、事件化は難しいとあきらめた過去があるというのだ。


 なぜ、名古屋地検がそこまで、こだわって立件したのか。


 答えはRCCとみられるのだ。


 地籍更正して広がった土地は、コモンヒルズ北山の中心部にあたる。それまで存在しなかった土地なので抵当権などは設定されていない。債権を有するRCCだが、手が届かなくなったのだ。そうなると破産など法的手続きを進めようとしても、思い通りに進まない。そこで、RCCは民事訴訟を提起した。


 だが、地籍更正の土地にはすでにいくつかの住宅が建てられていた。それが突然、RCCにも権利のある土地と言われても、住民たちは話が違うと怒るのも無理はない。


「RCCは八方塞の状況に追い込まれました。そこで、RCCは刑事告発して、事件化。自己の債権回収を有利に進めようとしたのではないのか」


 と中村被告の関連会社の幹部はそんな見方を説明した。


 事実、RCCは住民たちに「味方になれば悪いようにしない」と説明した。しかし、住民たちは、中村被告の手厚いケアや人柄を評価していた。それゆえ、RCCこそおかしいと主張したのだ。


 そうすると、今度はRCCは住民までも民事訴訟の被告として訴えたのである。何も知らない住民までをも巻き込んだのだ。自己の回収のためには、周囲の住民まで巻き込むRCC。本当に国策会社なのだろうか?