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RCCがとどめを刺した川治温泉と「柏屋ホテル」の経営者の嘆き(上)

「今、思うと、何で、何でと思うことはあります。RCCと銀行に翻弄されてしまった」


 と語るのは、片山則夫さん。


 本誌2007年5月1日号「債務者の名湯旅館で割引宿泊&飲食、整理回収機構の“非常識”を問う」と9月1日号「批判を封じ込めようと躍起のRCCが抱える問題点」で書いた「柏屋ホテル」の経営者が、この片山さんだ。


「取り調べを受けていて、いきなり逮捕って感じでした。いや、驚いた。その日は覚悟してなかったから」


 と片山さんは振り返る。


 それもこれも、みんな出発点は整理回収機構(以下RCC)である。


 片山さんの事件を簡単におさらいすると、柏屋ホテルは1926年創業。川治温泉の老舗旅館だ。バブル崩壊後、経営が悪化。そこへ、メインバンクの足利銀行が破綻し、債権がRCCに売却されてしまった。その話し合いがうまくいかず、2007年2月にRCCは柏屋ホテルや片山さんに対して、破産を申し立てた。


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RCC暴挙の舞台となった柏屋ホテル


 宇都宮地裁はまったく関係ない、園尾隆司裁判所長が破産の審問に割って入るという「暴挙」にもかかわらず、破産を認めた。その後、RCCは片山さんが、強制執行を逃れるために資産を移動させたと、強制執行妨害の容疑で刑事告発。2008年9月に、片山さんと妻は栃木県警に逮捕された。

 ☆       ☆       ☆

 バブルの時代。川治温泉は連日のように団体客のバスで賑わった。規模が大きい、隣の鬼怒川温泉も超満員。旅館は競って、ホテルの改装、増築を競った。


「足利銀行から、話がありました。30億円ほど貸すので、ホテルを増築しなさいと。客室、宴会場、温泉、今の規模にプラス700人は収容できる旅館にしなきゃいけないというのです。しばらくすると、足利銀行が勝手に設計図、完成予定図を持って、訪ねてきました。業者はどこがいい、客室にはこんな材料を使えなど、実に細やかなご指導がありましたよ。川治温泉、鬼怒川温泉、すべて仕切ったのは、足利銀行。断ることはできませんでした」


 と片山さん。そして担当者はこう付け加えたという。


「返済はいいですよ。金利だけ払ってくれたら後はこちらがいいようにします」


 足利銀行の本店でも、役員が片山さんを前にそう念押しした。


 この当時、川治温泉では柏屋ホテルだけでなく、あちこちの旅館に足利銀行から融資提案がなされていた。小さな温泉街には、ダンプが走り、重機の音がやむことはなかったという。


 そして、1994年に増築工事が完成。収容人員も一気に増えた。当初は増築効果もあって、客足もそれなりに増えた。しかし、そんな期間はわずか。平日には、閑古鳥が泣くようになった。


 客室や宴会場が増えたため、人手も増やさざるを得なかった。その分、コストがかかるようになった。だが、売上はあがらない。それでも「借金の返済は金利ですから、なんとかやっていけました。それでも、月に数百万円、返済していた。この時期、川治温泉、鬼怒川温泉の多くの旅館が、金利の返済すらたちゆかなくなった。運転資金まで、別枠で融資してもらうほどでした。『柏屋さんは、運転資金の融資を依頼したことがない』とうちはほめられたほどでした」


 と片山さんは話す。


 地元では、優良企業として、旅館の組合の役職も兼務。足利銀行の頭取からゴルフに誘われることもあった。


 だが、ほどなくして足利銀行の経営不安がささやかれるようになる。鬼怒川温泉、川治温泉は先にも述べたように、足利銀行への依存度が高い。突然、多くの旅館にそれまで猶予されていた融資の元金返済が求められた。金利の支払いでも、精一杯の中、元金を返済するのは不可能。


 足利銀行の足元は日毎に、揺らぐ。


「足利銀行と一緒に鬼怒川温泉、川治温泉もダメになる」という「風評被害」が蔓延。客足がてきめんに落ちてゆく。


「足利銀行は約束なんてしたかというくらいにひつこく、取り立ててきました。今なら高くまだ売れて、回収できると破産をかけて競売という話まであった」


 と片山さん。


 2003年、足利銀行が破綻。


 だが、その後に足利銀行よりもっともっと怖いRCCが控えていたことを、この時はまだ気がつかなかった。




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